2016/12/12 11:30


     

「選果」最高の状態で送り出すために

りんご農家にとって欠かせない作業の1つ「選果(せんか)」。収穫された無数とも言えるりんごから、お客様にお届けするにふさわしい品質のりんごを選び出す作業です。

冒頭の写真は、先日収穫が終わったばかり、選果された状態の「葉取らずサンふじ」です。ここからもう一手間あるのですが・・・いっちゃん林檎農園から、お客様のところへ手塩にかけてりんごが旅立つまでを少し覗いてきました。

まずは倉庫から運び出す


いっちゃん林檎農園の近くにある倉庫へと軽トラに揺られること数分。道中は園主と色々と雑談しながらです。ご当地アイドルでもある「りんご娘」の曲「彼の軽トラに乗って」が頭をよぎりましたが男2人だろ今はと。


重厚な扉をガッシャン!と開けます。かなり頑丈な扉で、若干ホラーな空気が漂うほどです。



これ、いっちゃん林檎農園のストックです。

一般家庭では想像もつかない量です。ちなみに木箱1つあたり20kg。ウルトラマンの体重が3.5トンですが置いてある箱の数を合わせると軽く超えてるのでは・・・


 今回の出荷分をフォークリフトで降ろします。なんと園主自ら!

りんご農家さん、実はさまざまな乗り物を扱うスキルが求められます。時折「え、なにこれ?」みたいなのも平然と乗りこなします。

そして、この狭いところをバックで出て行きます!!農家さん、基本的に車の運転が上手いです。上手いというか、レーサー並みに「ギュンッ!ピタッ!」みたいにキビキビと動きます。特に軽トラ。サーキットに軽トラで出れるんじゃないかな?ぐらいのドラテクです。



早速、軽トラの後ろに積み込んで行きます。ちなに、この木箱の組み方おもしろくないですか?独特なのですが、凹凸をうまいこと組み合わせていまして、こうしないと逆に崩れてしまうそうです。木箱のデザイン自体も含めて、大変よく考えられているなと。


無事に積み終わりました!後ろの方、溶けきっていない雪が残っていますね。先日、葉取らずサンふじの収穫が完了した翌日にかなりの雪が降りまして、その名残だと思います。場所にもよりますが、青森では日陰にある雪が春までずっと残っているとかはザラです。


作業場に戻って、早速つんできた木箱を降ろして行きます。1つ20kgをこの高さから降ろしていくのですから、かなりの体力仕事・・・!


手伝いますというと「いいから、いいから!写真撮って!写真。こういうのどう?」とか、園主はあっけらかんとしたものです。気さくに応えてくれるのですが、これを毎日のようにご家族とともにこなしていくわけです。それぞれの「当たり前の違い」というのがよくわかります。

絶景!振り返れば「津軽富士」


ここ、いきなり別空間のようなのですが、作業場のすぐ裏です。農園の後ろにそびえる山が「津軽富士(つがるふじ)」と呼ばれる「岩木山(いわきさん)」です。標高1,625mで、地元の人間にとっても欠かせない存在です。園主のお父様が畑の片付けをしていました。

確かに力仕事もあり、りんご農家さんの仕事は大変そうに見えます。ですが、こんな環境で仕事をできるって、人によっては贅沢に感じるのではないでしょうか。思わず見とれてしまう美しい光景にシャッターも止まりません(笑)


そして持ってきたりんごの一部がこれです。この状態は「無選果(むせんか)」、つまりまだ選んでいない状態です。手前に見えるくぼみは「コルクスポット」と言ってカルシウム欠乏によって起きる現象だそうです。コルクのように硬くなって、その部分が中で茶色くなるんですね。

味には全く影響ありません。皮をむく時についでに取ればいいだけです。が、これがあるだけで売れないのです。お客様の元には届けられないのです。日本人の品質に対する厳しさは凄まじいものがあります。コルクスポット1つで、「不良品だ」とレッテルを貼られてしまうことも。

同じ生き物なんですけどね。人間でいうシミ・ソバカスみたいなものなんでしょうけども、色々と考えさせられてしまいます。


あまりに美しいので寄ってみました。鮮やかですね!あ、ご紹介が遅れましたがこれは「コスモふじ」と言って別な品種です(笑)

同じ「ふじ」という名前ですが、「葉取らずサンふじ」とは別物です。色づきもよく、蜜入りも良くて、大玉です。甘いだけでなく、絶妙な酸味で何個でも食べられそうな味わい。古川家がいっちゃん林檎農園のりんごでどれが好き?と聞かれたら、真っ先に名前が上がる1つですね。

「葉取らずサンふじ」よりも少しだけ値段は張りますが、お釣りがきます。おすすめです!

農家の仕事はりんごのみにあらず


いっちゃん林檎農園は柿を売っている訳ではありません(笑)

りんご以外の農産物もあり、自家消費ですが、そちらにも手を入れる必要があります。

この柿、作業場のすぐそばで収穫されたものです。完熟で、これを冷凍しておくのだそうです。お父様が夏の作業終わりに楽しみとして食べているのだとか。その様子を想像するだけで、ほっこりします。



この柿を収穫されていたのは息子さんでした。

まず、こういう昇降機があること自体に驚いたのですが!

バックには岩木山!本当に絵になるロケーションで、やはりシャッターが止まりません(笑)

ようやく選果が終わ・・・らない!



そうこうしている間に、園主の奥様が選果を進めていました。家族が手分けして仕事を進めないと、あっという間に1日が終わってしまいますね。

こちら「コスモふじ」です。撮影に使用するものも選果していただきました。

形を揃えて、色づきが良いものを、傷がないものを1つ1つ確認しながら手で詰めていきます。この専用容器もりんごの大きさごと、梱包する箱のサイズごとで使い分けます。ギフト用だと、ここからさらにキャップをつけて、シールをつけて・・・となるのですが、その前に一仕事。


轟音とともにエアプレッサーで、ヘタの周りにある黒ずみを飛ばしていきます。

そう、掃除をしているのです。この後は1つ1つを磨きます。どこまで処理をしていくのでしょうか・・・

なぜこんなことをしているのかと言いますと、


高圧のエアプレッサーでヘタのあたりに吹きかけると、上の部分が「パンッ!」と割れてしまいます。

ヘタの周りが割れていると、そこから水分が入ることで中が褐変(かっぺん)してしまうケースがあります。そのせいで実がもろくなっているので、このような現象が起きるのだそうです。

これはクレームの原因になってしまいます。よって、この時点でまた選果して入れ替えます。

1つ1つ丁寧に処理をするからこそ、こういう地道な作業が繰り返されていきます。

それも全て、園主がずっと言葉にしている「安心、安全なりんごを美味しく召し上がっていただくため」。

ここまできて、ようやく出荷前の一工程である「選果」が終わります。


これは「葉取らずサンふじ」ですが、選果が終わったものはただ並んでいるだけではありません。
いくつもの工程をへて、「お客様に召し上がっていただくにふさわしいもの」として選ばれているのです。

このりんご1つができるまでに、どれだけのふるいが・・・そこはまた別な機会に触れてみます。

間近でみて率直に思うのは、1つとして無駄なく食べねば、とそればかりです。

古川家は「食」をテーマに活動しています。大事にしていることの1つとして、当たり前に食べられるものの裏には、生産者をはじめとして、携わっている方々の努力がどれだけあったのか、それを想像できる感性を持つことです。

たった1つの工程を見ても、これだけの手間暇がかかっているのです。美味しいものにはワケがある、ということなんでしょうね。

園主はそんなことをおくびにも出さず、「どうやったら、より安心・安全で美味しいりんごを届けられるか」、そこに集中しています。

とはいえ、色々と知識を身につけることも大事ですが、召し上がっていただければわかると思います。

「本当に美味しい!」

いっちゃん林檎農園の手塩にかけたりんご、ご興味を持ちましたら、ぜひ一度お試しあれ!

「葉取らずサンふじ」はこちら